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さまざまな人と共に

PAPLUS®プラスチックフリータンブラーができるまで

PAPLUS®ジャーナル第2回。

今回は、PAPLUS®プラスチックフリータンブラーの製作に携わったデザイナーの伊藤真一さんとカミーノ代表深澤の対談をお送りします。
二人の出会いから、PAPLUS®誕生、そしてタンブラーデザイン開発の裏側まで。
どうぞ、お楽しみに。

text:Yuki Oshima
photo:Tou Zuiko(MSPG studio)

ガーナでの出会い

──お二人の出会いはガーナ。当時、深澤さんは外交官として大使館に勤務。一方、伊藤さんは、青年海外協力隊として現地にいらしたとお聞きしました。

伊藤:そうですね。僕は、家具デザインを現地の短大で教えていました。深澤さんとは、青年海外協力隊の歓送迎会でお会いしたんですよね。あれはいつ頃でしたっけ?

深澤:1997年、24年前ですね。青年海外協力隊の方はインフラや教育関係が多い。その中で「デザイン」に関わっている伊藤さんに関心を持ちました。僕はデザインへの関心が高かったんです。なぜかというと、外務省時代に僕は、日本の外交政策や日本文化のファンをいかに増やすかという仕事をしてきました。そこで日本が広報活動が不得手であることを感じていたのです。アメリカなどの国は、デザインや写真を使った斬新な伝え方をする傾向があるのに対し、日本はどうしても堅苦しくなってしまう。そのような観点から、デザイナーの伊藤さんに政府の広報活動において、どのように効果的にデザインを活用すべきかアドバイスを頂きたいと思ったのです。

──その後、現地で食事に行くなど親交を深めたのですか?

伊藤:お互い活動拠点が離れていたので、頻繁にとはいきませんが、お会いした時にはアートやデザインの持つ力について夜遅くまで語り明かしましたね。
さらに繋がりが強くなってきたのは、日本に戻ってきてからです。深澤さんは帰国後しばらくして外務省を辞め、起業されました。そこからクライアント企業のコーポレートアイデンティティなどのクリエイティブディレクション、ウェブや制作物、オフィスのデザインまでご依頼いただくようになったんです。

深澤:お互いアフリカ時代からのお付き合いで、私のやりたいことや問題意識を伊藤さんはよく理解をされていた。一緒にお仕事をしやすかったですね。

今までにない新たなことを伝えるには
「デザイン」の力が不可欠

──深澤さんは帰国後、コンサルティング事業で起業され、その後PAPLUS®の開発へと挑んでいくのですね。

深澤:そうです。コンサルティング事業で起業し、充実した日々を過ごしていました。その後、プラスチックフリーが叫ばれる時代がやってくることを予感し、PAPLUS®開発へ。そこに至った経緯は第1回でお話しています。PAPLUS®という今までにない素材、概念を世の中に広めるためには一般の人に「分かりやすい」言葉で伝えることが、何よりも大切だと思いました。商品を見て「あ、これ可愛い、かっこいい」と興味を持ってもらう。そこから「実はプラスチックじゃなく、植物由来の素材の商品なんですよ」という説明をすることで、スッと頭に入ってくる。そのためには「デザイン」の力が不可欠だと思いました。そこで、伊藤さんにデザインをお願いしたんです。

──そこから伊藤さんがプラスチックフリータンブラー製作へと加わっていくのですね。

伊藤:PAPLUS®という素材を見た時に「見たことがないな、やってみたいな」とワクワクしたことを覚えています。一般的に、デザインは用途と機能があるところから、様々なことを積み上げていきますが、この場合は順序が逆です。普段、私が研究しているガーナやフィリピンの素材を使ったデザインに通じるところがありますね。
デザイン決定にあたっては、シルエットや使い勝手の検証のために3Dプリンターで試作品をたくさん作りました。PAPLUS®は素材感が強いので、シンプルなデザインが合うと感じました。このタンブラーは、射出(しゃしゅつ)成形という金属の型に熱でドロドロに溶かした樹脂を流し込む方法で作っています。そのため、型から取り出すことを生産性の観点から考えると、勾配が必要なのです。ですが、シンプルでありながらも、アイデンティティのあるデザインを作るために検証していくと、勾配がない真っ直ぐな形がベストだと思いました。そこで、金型から取り出す方法を変え、金型そのものも縦に割る方法をとりました。どうしても出てしまう分割線は、手間がかかりますが手作業で取ることになったのです。

深澤:実際に作り始めると、さらに予測不能なことが出てきましたね。何度も投げ出したくなる気持ちをこらえつつ、これらの課題をひとつひとつクリアしていきました。伊藤さんをはじめ、PAPLUS®を世に広めたいと協力を惜しまない多くの人の力がなければ、この製品は誕生しなかったと思います。金型メーカーや成形工場の職人さんとも毎日、密なコミュニケーションをとっていきました。僕たちには今までにないエコ素材で、新たな循環をつくるという概念を世に広める使命がある。そのために、デザインに関して妥協はできなかったのです。

同じ風景を
共有しているということ

──お二人が同じ時代のガーナの風景、つまりイメージを共有できていることが、ものづくりをする上で価値観を共有することへと繋がっているのでしょうか。

伊藤:深澤さんが門外漢の分野であった、プラスチックに替わる素材PAPLUS®の開発を始めた時、びっくりしたんですけど、同時に納得できたんですよね。「現地の記憶が、ずっと深澤さんの中に残っているのかな」と。僕も初めてガーナに行った時、強烈な印象がありましたね。今は急速に発展していますが、30年前は信号も少なく、ショッピングモールもありませんでした。また、現地のポリ袋は普通、黒色なのですがそれが道端に無造作に捨てられていると、良く目立つんです。

深澤:そうですね。ただ、発展途上国においてゴミ処理の問題は、優先順位が低い。それよりも保健衛生や教育が先で、プラスチックに代表されるゴミ処理の問題は後回しにされがちなんです。ただそれを、どうにかしたいという気持ちが僕の中にずっとあった。そこから20年以上の時を経て「もしかして、この問題に貢献できるかもしれない」と気づいた時、ドキドキしましたね。


ガーナ時代の写真。左から深澤、伊藤さん、大使館職員の橋本さん。

──今後、PAPLUS®で新たな製品を作る予定はありますか?

深澤:タンブラー以外のテーブルウェア製品や雑貨などを考えています。今までの開発において、様々な視点を入れることを大切にしてきました。それはこれからも変わらずに、新たな可能性を探っていきたいです。経営者の視点、マーケターの視点、そこにクリエイターの視点が加わることで、想像もつかないアイディアが出てくる。これからも様々な方のお力添えをいただきたいと思っております。

伊藤:新たな製品については話が止まらなくなりますよね。深澤さん、使い捨て容器の代替品をPAPLUS®で真空成形してみるってどうなんですかね?

深澤:うーん。伊藤さん、真空成形には柔軟性が不可欠なので、石油成分を増やせば実現可能です。ただ、そうすると生分解性がなくなるので使い捨てプラ削減のソリューションにはならないですよね…。まぁこんな感じで、どんどん話は続いていくんですよ(笑)。